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2007年9月24日 (月)

父 ---Father---

 僕の住む町月形町から車で1時間半ほど走った。そこには新築の建物、有料老人ホーム。僕の父の最期の引越し先になるところ。何も知らない父は、立派な施設に喜び、「こんなところに住めたらよろしいですね」と職員の人に笑顔で振舞う。その日は施設の見学だけ。家に戻ってきたが、父は家には入らず、そのまま月形町内の特別養護老人ホームへ。出発の時、父は笑顔で僕に手を振る。いつものデイサービスに行くと思っているのだろう。もう二度と家に帰ることはないのに…。

 僕は子供の頃のいろんな体験から、父を憎んで育った。父のような人間にだけはなりたくないと思った。そのことについて、僕のブログの以下のページに詳しく書いている。

http://moonflorist.way-nifty.com/moonflorist/2006/05/post_4ddf.html

 父が来て以来、夫婦関係がうまくいかなくなった。妻がいらいらすることが多くなり、父に攻撃的になる。父は痴呆症で、言ってもわからないのに、と思いながら、これ以上夫婦関係が悪化するのを恐れ、何も口出しできない。それに、僕は父を憎んでいるはずで、それよりも僕の家庭を大切にしたいはずだ。でも、心にはもどかしい気持ちが溜まっていく。また、妻への愛情が薄れていく。どうして僕の父をもっと人間らしく扱ってくれないのか?

 夫婦の会話もますます少なくなり、父への攻撃もさらに激しくなる。そんな時、4歳になる息子が妻の母親に、「じいちゃん、どうして怒られてるの?」と聞いた。ばあちゃんは答えた。「怒られてるんじゃなくて、できないから教えてもらってるのよ。」

 痴呆症の老人に、何度言っても毎日できないことを、毎日のように怒鳴りつけ、そんなの誰が見ても怒られてるに決まってる。思わず僕は腹が立って「子供に嘘をつくな。子供が一番正直なんだ。」とばあちゃんに言ったが、内心では、「じいちゃん、どうして怒られてるの?」の一言は僕が一番言いたい台詞なんだと叫んでいた。

 その数日後、大きな問題が発生して、どうしても父を老人ホームに預けなければならなくなった。

 父が僕に最後に手を振った時、ようやく気がついた。大嫌いだった、憎んでいた父であったはずなのに、どうして父が攻撃されてこんなに腹が立っていたのか? 家庭が崩壊するかもしれない状況に追い込まれているというのに、そのことに対してどうしてこんなにも冷静でいられるのか?

 そう、憎しみは愛情の裏返しだったんだ。僕は父が大好きだったんだ。父に愛されたい、父と遊びたい、父と手を繋いで歩きたい、父にだっこされたい、そんな何ひとつとして叶わなかった思いが、愛情が憎しみになって、父を憎んでいると思っていたが、本当に父親を嫌う子供なんているはずがない。それは、今の自分の息子を見れば本当によくわかる。

 子供はお父さんが大好きなんだよ。

 父を老人ホームに預ける、その瞬間に、ようやく自分の気持ちがわかった。そして、こんなことになってしまった情けなさ、自分自身の不甲斐なさ、そして取り返しのつかないところまで来てしまったことを悟る。

 何もかも終わりにしたい。時間を戻したい。一からやり直したい。何も考えず、父親の後を追いかけていたあの頃へ。

 だけど、何一つとして叶わない。できることは、現実をしっかりと見据え、新しい毎日を作ってゆくこと。厳しい現実であろうとも、自分の気持ちに正直に生きたい。嵐を恐れていては、本当の幸せには辿り着けない。

 今までだって、バカなことをたくさんして、それでも今、元気に生きていて、もう何も思い残すことは無い。精一杯、もっともっとバカになってやる。

 子供はお父さんが大好きなんだよ。

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コメント

辛かったですね。
想いの相違はあれど、皆が辛かったんだと思います。
お父様にしても、痴呆を起こしているのは肉体の都合で、魂は正常に機能しているとしたら、潜在意識の中では辛いとか申し訳ないとか感じていたかもしれません。
どんな境遇に於かれても、愛情を送る事が唯一できる事かなと…最近思います。
離れて暮らすお父様に対し、愛情の気持ちを送り続けてみて下さい。気持ちは魂に届きます。
そして、これまで父親の介護に手を貸して下さった奥様にも愛情の気持ちを送ってみてください。
世の中に愛情以上に大切なものは無いような気がします。そこを原点に生まれるものには悪いものは無いはずです。
北風と太陽のお話しの太陽の様な形で旅人のコートを脱がせる様な形、愛情でもって状況を好転させる力が元々備わっているんじゃないかと思います。

私もまた、貴方のブログで大切な事を気付かせて頂きました。ありがとうございます。
皆様が幸せでありますように。

投稿: Shiho | 2007年11月10日 (土) 09時13分

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